悟りへの瞑想の道を脳科学から解説

悟りとはどうなることなのかを、瞑想で悟りを得る道筋を脳科学から具体的に解説して行きます

5-3)観察瞑想とメタ認知 5-3-1)能動性意識と受動性意識

5-3)観察瞑想とメタ認知

5-3-1)能動性意識と受動性意識
第五章第二節では、注意をある一つの事柄に注意集中させる、集中瞑想「ダーラナー」について述べました。ところで、「注意を一つの事柄に絞って集中させる」という「意識の使い方」を「能動性意識」(トップダウン型意識)(能動性注意)と呼び、「意識をある方向に向け続けはするが特定のどれにも注意を固定(焦点化)させずにただ特定の領域に拡散的に意識を向けるだけ」の意識の使い方を「受動性意識」(ボトムアップ型意識)と呼びます。だから受動性意識は、意識を向けるという点で、意識以下の無意識とは異なります。無意識は、意識に向けて上昇を試みるが意識にまで届かないほど弱い意識レベル(上昇力)にあります。それに対して、情報を取りに行く能動性意識を切る(スイッチオフ)と、受動性意識は、一つの事柄に注意を差し向ける能動性意識によって除外・排除されてはいたが、受け取れるほどの強さ(上昇力)を持つ情報を受け取ります。例えば、夏の森で、蝉がうるさく鳴くとき、蝉の鳴き声以外に耳を澄ませば、つまり蝉の鳴き声を受け取る能動性意識(注意)を消して受動性意識に切り替えると、今まで排除されて聞こえていなかった、水のせせらぎ、鳥の鳴き声、木々を吹き抜ける風の音などが聞こえて来ます。
注)注意の所で述べましたが、注意機能は意識(前頭前野、特に前頭眼野)によって方向・向き・強さ・持続性などを切り替えられます。
能動性意識は、必要な情報を選択して不要な情報を排除します。その能動性意識(一番手情報のみ)のスイッチを切ると、受動性意識は、今まで能動性意識から排除されていた情報達が競争的に意識に向けて上昇して来た情報を受容します。受動性意識は、意識領域だが、能動性(トップダウン)を停止させた状態の意識です。あらゆる情報は、意識に向けて競争的に上昇して行こうとします。あたかも精子群が子宮を目指して競争的に向かって行こうとするように。しかし受動性意識もある程度の方向性は持ちます、例えば視覚情報とか聴覚情報とかの限定はします。しかしそれすらも限定しない更に深い受動性意識も可能です。この意識を能動性(トップダウン型)か受動性(ボトムアップ型)かに切り替えるのは、「前部帯状回」(認知領域)です。前部帯状回(前帯状皮質)は、前頭前野頭頂葉のなど、運動系や前頭眼野とも接続して、刺激(情報)のトップダウンボトムアップの切り替え処理や他の脳領域への適切な制御の割り当ての中心的役割を担っています。
つまり集中瞑想は、能動性意識を使うのですが、次に説明する観察瞑想は、受動性意識を起動させます。なお能動性意識が中央実行機能(CEN)と関係し、受動性意識がDMNと関係します。