悟りへの瞑想の道を脳科学から解説

悟りとはどうなることなのかを、瞑想で悟りを得る道筋を脳科学から具体的に解説して行きます

5-3)観察瞑想とメタ認知 5-3-3)メタ認知全般 5-3-3-1)メタ認知とは

5-3)観察瞑想とメタ認知

5-3-3)メタ認知全般
5-3-3-1)メタ認知とは
観察瞑想の中で、「メタ認知的気付き」という言葉が出て来ました。ではこのメタ認知的気付きとは何なのでしょうか。観察(洞察)瞑想では、「今現在ここ」(常に現在だけに意識を向け続けるという意味)に向けられた意識が、いつの間にか雑念(マインドワンダリング)をしているという、漂流してしまった自分自身(注意)の意識体験にあらためて注意が向けられ、その事実に気づくことで現在の活動にあらためて注意を戻します。私達は、夢(過去の記憶情報)を見ている時には、これが夢だとは気づけません。「目が覚め」て始めて夢だったと分かります。
ということで、「メタ認知」とか「気づき」について説明をしていきます。その前にそれと関連するメタ記憶を先に説明します。自分自身の「記憶を回顧し内省」する能力は、「メタ記憶」(記憶に関するメタ記憶・認知)と呼ばれます。このメタ記憶は、自身の行った認知情報処理を客体化(客観化)し内省的に評価する時に働きます。例えば、自転車の鍵を何処に置いたか忘れてしまった時に、あらためて思い返す場合に、記憶を過去へとさかのぼりながら、自転車を止めて、鍵をかけてポケットにしまい、家に入って、喉が渇いていたので、テーブルに、「あっ、居間の食卓にポンと置いた」と、自分の行動履歴を思い出します。つまりこの行動履歴を片っ端から取っているのが「メタ記憶」(メタ認知メタ認知記憶)です。私達は無意識裏に自分自身の行動履歴を片っ端から記録しています。
これは短期記憶なのですが、長期記憶に関わるメタ記憶処理時には「背外側前頭前野」が中心的に活動します。行動記憶(海馬機能)そのものの処理とは独立したメタ記憶(記憶機能付きモニター装置)の神経基盤が大脳神経ネットワーク内(特に前頭前野)に存在します。といっても、前頭前野自体は記憶貯蔵庫ではありませんが。
メタ認知機能も、メタ記憶と同じ前頭前野の外側にある背外側前頭前野が主導します。なお背内側前頭前野は、自分や他人の心を客観(メタ認知)的に見る機能を持っている場所だともいわれます。
夢見の場合は、夢を見ている時には主観(行為者側)的に経験しているが、目覚めた後に思い返す時には、その夢(体験)を客観(メタ認知・観客席側)的に振り返っています。なお夢を記憶しているのは、前頭前野(メタ記憶・メタ認知)が働いていたからです。夢見時に前頭前野が起動していると、メタ認知(記憶)が働いて夢内容を記憶しています。
このように大脳神経ネットワーク内に、自分自身(や他者)が行った情報処理を更に一段上からモニタ-(監視)して自己(と他者を)評価する神経回路が存在します。このような、単に記憶だけではなく、「自分自身の認知活動(思考・知覚・記憶・判断など精神活動)を内省的に客観的に捉え認知する行為」を「メタ認知」という。メタ記憶はメタ認知内の一機能です。メタ認知は、客観的な自己、もうひとりの自分などと形容されるように、現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化・客観化して認識することにより、自分自身の認知行動を俯瞰的に把握することができる能力です。観察瞑想の目的の一つはこれです。