悟りへの瞑想の道を脳科学から解説

悟りとはどうなることなのかを、瞑想で悟りを得る道筋を脳科学から具体的に解説して行きます

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-5)コルチゾ-ル

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-5)コルチゾ-ル
コルチゾールは、瞑想では分泌させることはできないのですが、重要なホルモン、生きていくのに絶対必要不可欠なホルモンなので取り上げます。またコルチゾール神経伝達物質ではなく直接血中に放出されるホルモンなのですが、精神的ストレスを感じると、人はコルチゾ-ル(副腎皮質から分泌されるホルモン)を分泌させます。ストレスが、脳の視床に働いて、脳下垂体から出る副腎皮質刺激ホルモンを介して、副腎皮質ホルモンを放出させます。しかしストレスといっても、運動などの負荷であっても負荷がかかれば放出されます。
神経伝達物質は選択的に個別の脳部位に働きかけるのですが、ホルモンは電波のように一斉放出します。でも無差別に作用するわけではなく、そのホルモンを受容する受容体(受信器)を持たないと作用は受けられません。しかしコルチゾールは、直接体内のタンパク質の合成を制御することでさまざまな作用をもたらす特殊なホルモンです。その結果コルチゾールは脳内の「あらゆるホルモンの活動性を低下」させます。
コルチゾールの主な働きは、全身の色々な臓器に働きかけます。例えば、肝臓での糖の新生、筋肉でのタンパク質代謝、脂肪組織での脂肪の分解と代謝の促進など、各所での代謝の促進や、抗炎症作用、免疫抑制など、コルチゾールは身体的活性化にとって必須のホルモンです。つまり、脳神経の働きを弱めたり停めたりして、身体の働きに全集中させる役割を担うのがコルチゾ-ルです。
しかし、精神的ストレスが継続すると、コルチゾールは、臓器を疲弊・過労させてしまいます。特にホルモンの製造元の副腎を過労させます。しかし通常は産生されたコルチゾールは、ネガティブフィードバック(自身の産生を抑制する回帰性システム)によりバランスを保っています。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-4)オキシトシン 6-4-4-2)オキシトシンと扁桃体とセロトニン

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-4)オキシトシン
6-4-4-2)オキシトシン扁桃体セロトニン
オキシトシン神経は、扁桃体、海馬、側坐核などへも軸索(伝線)を伸ばして、それらの領域における神経細胞の活動を調節します。
オキシトシン扁桃体においては活動を抑制する作用を持ちます。具体的には、ネズミの例なのですが、オキシトシンは、抗ストレス作用として、抑制系GABA(ガバ)を活性化させて、間接的に恐怖刺激に対するすくみ(恐怖で体が動かなくなる)行動を抑制します。窮鼠猫を噛むですね。
更にオキシトシンは、脳内ではセロトニン神経の活動を活性化させます。セロトニン神経は、不安や興奮した状態から、元の安定した心の状態に戻す働き(心理的恒常性維持)をしています。オキシトシンは、扁桃体でも放出され、人の場合には目の前の相手を識別するという社会性記憶を向上させます。オキシトシンは、母子関係の形成、社会性の向上など、対人関係の形成と向上とを推進させる神経伝達物質です。感謝や思いやりの気持ちを頭に思い浮かべるだけでも、オキシトシンが分泌されます。ということは、瞑想の種類によっては、オキシトシンの分泌は可能だともいえます。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-4)オキシトシン 6-4-4-1)オキシトシン全般

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-4)オキシトシン
6-4-4-1)オキシトシン全般
神経伝達物質オキシトシンは、瞑想によって活性化させることはできないのですが、重要な神経伝達物質なので取り上げます。オキシトシンは、「視床下部」で合成され下垂体後葉に運ばれてそこから放出されます。
注1)慈悲の瞑想でオキシトシンが活性化するという報告もあります。
注2)オキシトシンは、神経伝達物質としてだけでなく、血中に放出されるホルモンとしての働きもあります。末梢組織(受信側)ではホルモンとして、中枢神経(受信側)では神経伝達物質として働きます。
柔らかい物にゆっくりと触覚を通じて受けた感覚は、快や不快、安心感や嫌悪感といった情動を喚起させる役割を持ちます。その感覚は、自己の意識や感情と関わる島皮質や前部帯状回(SN)、更には自律神経の中枢である視床下部にも届いています。
この柔らかくて気持ちいいという快適な触覚刺激が脳(大脳新皮質)に伝わると、視床下部ではオキシトシンが分泌されます。オキシトシンが分泌されると、副交感神経が優位になり、人は心身ともにリラックスし、ストレスを軽減させます。心臓にもオキシトシンの受容(受信)体が豊富に存在し、オキシトシンによって血圧が下がり心拍も下がります。だからオキシトシンはストレスから心臓を守る働きも持っています。人(特に幼い子)にとって、ぬいぐるみや柔らかい布はこういう意味を持つのかも知れませんね。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-3)アセチルコリン 6-4-3-3)アセチルコリンとレム睡眠

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-3)アセチルコリン
6-4-3-3)アセチルコリンレム睡眠
アセチルコリンは、更に自律神経の内、副交感神経を刺激し、脈拍を遅くし、唾液の産生を促すなど、内向に相応しい心身状態を構築します。
前脳基底部のアセチルコリン神経が活動すると、視覚情報処理が促進されたり、手がかり検出が促進されたり、刺激特徴の結合や、視覚的注意に関わっています。
アセチルコリンは、覚醒時だけでなくレム睡眠(夢見)時にも活発に活動します。覚醒時には全ての覚醒系が活動するが、レム睡眠時にはコリン作動系のみが活動します。1)脳幹のコリン作動系は上行性網様体賦活系(意識発電所)の活動を促して、また2)前脳基底部のコリン作動系は直接大脳新皮質に投射して、大脳新皮質(高次精神)活動を活性化させます。これにより覚醒時同様の覚醒状態が誘発されます。つまり覚醒(全覚醒系の活動)とレム睡眠(コリン作動系のみの活動)の差は、活性化する神経伝達物質の差です。
注1)アセチルコリンを発信する神経核はいくつものあるので、それらの神経核をまとめてコリン作動系(神経)として呼称します。
注2)一般的に大脳新皮質全般は、アセチルコリンで活性化します。大脳辺縁系は、アドレナリンで活性化します。間脳(視床視床下部)は、ノルアドレナリンで活性化します。脳幹は、ヒスタミンで活性化します。
参照)全覚醒系に関しては、「6-4-2)ドーパミン

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-3)アセチルコリン 6-4-3-2)アセチルコリンと注意集中

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-3)アセチルコリン
6-4-3-2)アセチルコリンと注意集中
大脳新皮質の「アセチルコリン」は、脳の感覚入力処理の調整(強弱)に関与する感覚情報入出調整機構を駆動(動か)します。この働き(感覚情報の選択と集中)は、認知機能の基盤となる「注意、集中」などにとって重要です。

またこの神経伝達物質は、作業記憶など高次(精神)機能と深く関わりがあります。脳波のガンマ波(情報統合)とシータ波(記憶機能)(どちらも脳の活性化指標)が発生している時、脳内では神経伝達物質アセチルコリン神経細胞が非常に活発に活動しており、脳には外から大量の情報が流入しています。

アセチルコリンは、注意力、学習力、長期記憶、覚醒状態を維持する能力(機能)に働きかけ、何かを考えたり感じたり、内省したりすると快感を引き起こします。内向的な人の方が、学習や運動制御、覚醒制御を司る脳の部位が活発で、前運動野が外部刺激を処理する速度が早い。
特に前脳基底部内マイネル基底核からのアセチルコリンは、認知機能の基盤となる注意力、集中、記憶や覚醒、思考に非常に重要な役割を担います。その内で海馬へ投射するアセチルコリンは、θ波を発生させ、海馬の記憶固定に深く関与します。セロトニンは、逆にそのマイネル基底核アセチルコリンを抑制します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-3)アセチルコリン 6-4-3-1)アセチルコリンとドーパミンとセロトニンの関係

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-3)アセチルコリン
6-4-3-1)アセチルコリンドーパミンセロトニンの関係
アセチルコリンは、ド-パミンと互いに拮抗し合う物質です。脳内のド-パミン作用が弱くなると、アセチルコリンの作用が強くなります。ド-パミンは、アセチルコリンの働きを抑える作用によって、自身の作用を強めることができます。
アセチルコリンは、錐体細胞(大脳皮質の投射型興奮性神経細胞)の興奮と抑制のバランス調整に関与します。つまり錐体細胞に対して興奮・抑制の二面性の作用をもたらします。
前脳基底核コリン作動性神経は、脳全体にアセチルコリンを広く放出する重要な神経細胞です。背側縫線核セロトニン神経(背側経路)が活性化すると、大脳皮質(の機能)を活性化する前脳基底部「アセチルコリン」神経(腹側経路)の働きが抑制されます。しかし、ノルアドレナリン神経を含む、背側経路側の網様体賦活系は、その影響を受けないので、覚醒意識(網様体賦活系)ははっきりとしながらも、大脳新皮質(認知機能)の働き(アセチルコリン神経)が抑制されるため、「無の境地」(部屋は明るいが誰もいない)になるのです。意識ははっきりしているが、精神活動がないという「無」の状態をもたらします。
注)前脳基底部は、前頭葉底面の後端に位置し、主に脳幹部と辺縁系から入力を受けます。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-2)ドーパミン

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-2)ドーパミン
神経伝達物質は、発信する側と受信する側とがあり、ドーパミンでは、「受信側」に受けると興奮するタイプと、逆に抑制するタイプとがあります。具体的にはD1とD5型は興奮型で、D2・D3・D4は抑制型です。だからドーパミン即発奮とはいえないのです。
ここではドーパミンと認知機能との関係に限定して説明します。大脳新皮質(特に前頭前野)でのドーパミンは、認知機能に働きかけるが、大脳辺縁系で働くドーパミンは、快や報酬に関わって働きます。
ドーパミン(受容体)は、大脳皮質の中では前頭葉に最も多く分布しており、前頭前野の働きに最も重要な役割を果たす神経伝達物質です。前頭前野でのドーパミンは、学習・記憶、注意、実行機能などの認知機能を調節する、特に「作業記憶」(CEN)に寄与します。即ち作業記憶課題中に前頭前野ドーパミンレベルが上昇します。
逆に、精神的ストレス刺激がドーパミンA10経路を活性化すると、前頭前野のド-パミンD1受容体を介して前頭前野の行う認知・思考・ワーキングメモリ等の機能を抑制してしまう。あれっ、興奮型ドーパミンなのに活性化させずに抑制します。おかしいですね。理由は、強いストレスは、前頭前野内のドーパミン濃度を「過剰に」上昇させます。他方老化に伴って前頭連合野内のドーパミン濃度は減少する。どちらの場合も認知機能は低下します。そのわけは、ドーパミンには「適正」量があり、過量でも少量でもうまく働かないのです。多方興奮系のドーパミンは、快の記憶が原因として扁桃体を活性化して、それがA10ドーパミン神経を活性化し、更にA10活性化によってドパミン側坐核(意欲・行動化)を興奮させて、快(欲求)を追い求めます。
アセチルコリン(精神活動)はド-パミンと互いに拮抗し合う関係にあります。ド-パミン作用が弱くなっている状態ではアセチルコリンの作用が強くなっています。アセチルコリンの働きを抑える作用によってド-パミンの作用を強めることができます。
安静時には認知課題中に比べてドーパミンが増加する脳領域があります。DMNの脳活動は内的思考過程に関係しているが、前頭前野内側部(DMN脳部位)における安静時のドーパミンの増加が内的思考過程を支えています。他方前頭前野外側部のドーパミンはCEN認知行動を支えています。つまりドーパミンがDMNに働き掛けると内向し、CENに働き掛けると外向する傾向にあります。
レム睡眠時における覚醒系モノアミン(セロトニンノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミンドーパミン)作動系の活動消失はドーパミンの作用を増強させます。大脳(特に辺縁系)におけるドーパミンの作用亢進は、夢を誘発させます。即ち、脳幹はレム睡眠を誘発し、前脳におけるドーパミン作動系の作用が夢見を誘発します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-3)セロトニンの特徴 6-4-1-4-5)姿勢保持の抗重力筋を間接的に活性化

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-3)セロトニンの特徴
6-4-1-4-5)姿勢保持の抗重力筋を間接的に活性化
瞑想では、姿勢が重視されます。姿勢に関わる部位として、重力に対して背骨を支え、姿勢を維持する筋肉群を総称する「抗重力筋」(顔から足に至るまで全身に渡る筋群:脊柱起立筋、腸腰筋大腿四頭筋など)があります。実はセロトニン自体には筋肉へ直接的に働きかけることはありませんが、大脳から運動神経へ指令が出される時に、延髄から下方へと分泌されるセロトニンがその運動神経を活性化して、間接的に抗重力筋を活性化するので、良い姿勢を保ちやすくなります。このように日常的に姿勢よく瞑想を行うことでセロトニンによる抗重力筋への間接的ながらも働きかけが高まります。こうしたセロトニンの作用は、瞑想に加え、呼吸やリズム運動、太陽の光を浴びることでも活性化します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-3)セロトニンの特徴 6-4-1-3-4)セロトニンと内向性

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-3)セロトニンの特徴
6-4-1-3-4)セロトニンと内向性
外向性(行動力)のアドレナリンとドーパミンの2つが過剰になって暴走しないように、調節するのがセロトニンです。セロトニンは、ドーパミンノルアドレナリン(アドレナリン)を制御し精神を安定させる働きをします。大まかに言うと、アドレナリンとドーパミンは外向性で、セロトニン(行動抑制)とアセチルコリン(高次精神活動促進)は内向性といえます。
副腎髄質で合成分泌される神経伝達物質には、アドレナリン、ノルアドレナリンドーパミンがあり、これらを総称してカテコールアミン(外向三兄弟)という。カテコールアミンが不足すると、心身の脱力感や意欲の低下が起こり、抑うつ状態を招きやすくなります。なおアドレナリンとノルアドレナリンの作用は似ています。例えばアドレナリンとノルアドレナリンは交感神経を活性化させます。それに対してドーパミンは中枢神経系を活性化させます。
注1)後で述べるのですが、ドーパミンは即外向性とはいえません。というのは、ドーパミンが背外側前頭前野(外向性:CEN)を活性化させると外向的ですが、内側前頭前野(内向性:DMN)を活性化させると内向的となります。
注2)ドーパミンは認知機能(学習、記憶、注意、実行機能など)を調節します。これは主に中央実行機能(CEN)に該当します。
中枢神経系を活性化させるドーパミンに対して、本格的な外向性のアドレナリンやノルアドレナリンは、身体を戦う状態に作り変えるために、身体により多くの酸素を取り入れるよう気管を拡張し、血管を収縮して血圧を上昇させ、体中に大量の酸素を送り込めるように心臓を激しく動かします。
交感神経が優位になると、アドレナリンとノルアドレナリンというホルモンを分泌するという逆コースもあります。即ち、交感神経が活発化し、体中に張り巡らされた交感神経末端から臓器にノルアドレナリンが放出されます。また交感神経は腎臓の上にある副腎髄質を刺激して血液中にアドレナリンを放出します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-3)セロトニンの特徴 6-4-1-3-3)セロトニンはドーパミンと交感神経を抑制する

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-3)セロトニンの特徴
6-4-1-3-3)セロトニンドーパミンと交感神経を抑制する
交感神経が優位になり過ぎるとやがて心身共に疲れてしまいますが、セロトニンはその交感神経を高めすぎずに適度な状態を保ちます。つまりセロトニン神経は交感神経と副交感神経のバランスを整えます。
それと同時に、快楽や意欲(欲望)をもたらす報酬系(大脳辺縁系)のドーパミンの暴走を抑えます。ドーパミンの過剰な分泌は、興奮状態や依存症をもたらしかねない。それを抑制する働きが、セロトニンにはあります。ドーパミンを適度に抑制し、平常心を維持します。
具体的には、反応抑制機能を持つ腹外側前頭前野へのセロトニンが活性化すると、ドーパミンによる衝動性の攻撃行動を抑制するが、セロトニンが欠乏すると抑制が効かずキレやすくなります。これはセロトニン神経が間接的にド-パミン神経を抑制していることを表します。セロトニンドーパミンの関係は、セロトニンドーパミンの働きを抑制的に制御します。ドーパミンのみが過剰に分泌されると快感への欲求が止まらなくなります。そうならない様に欲求の制御を行い、適度な欲求レベルを維持する役割をするのが、セロトニンです。
一つの例として、視覚情報を受け取った腹外側前頭前野は、状況的に不適切な反応を抑制することによって行動選択の決定に貢献します。より具体的に言えば、運動前野系が提出した行動の選択候補の中から、不適切なものを腹外側前頭前野系が抑制的に選択(つまり排除)します。外側部には前頭前野背外側領域(中前頭回)と腹外側領域(下前頭回)とがあります。なお下前頭回は弁蓋部・三角部・眼窩部で構成されます。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-3)セロトニンの特徴 6-4-1-3-2)セロトニンは記憶機能を抑制

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-3)セロトニンの特徴
6-4-1-3-2)セロトニンは記憶機能を抑制
セロトニン神経の活動低下が、記憶課題の遂行を改善します。例えば何かに注意を向けた時、新しいものを見ている時、興味をいだいた時などにθ波が現れます。その原因は、そういう状況では、正中縫線核からのセロトニン神経が抑制されて、その結果記憶過程が活性化されるからです。つまり正中縫線核からのセロトニン神経は、ガバ抑制神経に働きかけて、海馬の働きを停止させています。
ところが注意や興味関心を向けると、セロトニン神経が抑制されます。セロトニン神経の働きは、能動的に注意を集中して周囲から情報を収集する行動を行うときには活動が停止します。
注)セロトニンは、マイネル基底核を抑制します。そのマイネル基底核からのコリン作動性(アセチルコリン)軸索は大脳皮質の全層に投射しています。アセチルコリンは、記憶の形成や強化に関わります。つまりセロトニンは記憶に関わるアセチルコリンを抑制します。
ということは、セロトニンアセチルコリンは、間接的ながらも拮抗的関係にあります。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-3)セロトニンの特徴 6-4-1-3-1)いくつもの神経伝達物質を抑制

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-3)セロトニンの特徴
6-4-1-3-1)いくつもの神経伝達物質を抑制
瞑想(特にリズミカルな呼吸に意識を集中する集中瞑想)によってセロトニンが活性化すると、意識を覚醒する促進系の神経伝達物質アセチルコリンの過剰な働きが抑制されます。同じくセロトニンは、ドーパミンノルアドレナリン(アドレナリン)」を制御し精神を安定させます。またレム(夢見)睡眠を抑制し、覚醒を促進するが覚醒した中でも高ぶりすぎることのない、安定した穏やかな精神状態を保持します。それによって、感情に振り回されず感情の制御が上手になり、適度な覚醒状態を維持できます。
その結果、心身は起きているのに休息しているかのようなリラックス状態を得られ、静かな穏やかな精神状態でいられます。リズミカルな呼吸によって、脳波的には開眼覚醒状態であっても、β波(活発な活動的覚醒)の中にアルファ波(10−13Hz)が混入するようになります。眼球(まばたき)のリズミカルな運動も、セロトニン神経の活性化には有効です。
まとめると、セロトニンは、アセチルコリンドーパミンノルアドレナリン、アドレナリン(覚醒系)を抑制的に制御します。
注)セロトニンが、前脳基底部のアセチルコリン神経(精神活動)を抑制すると、アルファ波が増加します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-2)セロトニンを活性化する方法

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-2)セロトニンを活性化する方法
セロトニンは、脳内の「パターン形成機構」による「リズム性運動」(歩行運動、咀嚼運動、呼吸運動、グルーミングなど)で活性化し、覚醒状態における種々な活動に適度な緊張(抗重力筋の緊張や交感神経の緊張など)を与える役割があります。
注)中枢のパターン生成器(機構)は、自らリズミックな運動出力パターンを形成する回路です。例えば脊椎動物においては、歩行や泳動のリズム性運動は脊髄に存在します。
リズム性運動がセロトニンを活性化させます。それ以外にも声を出す読経・声明、ヨガ、太極拳などの、声出し、呼吸、リズム運動などによってもセロトニン神経は活性化できます。更には、自転車こぎ、スクワット、階段昇降など、またガム噛みなどのリズム性運動を行ってもセロトニン神経は活性化されます。
瞑想などで、呼吸に意識を集中させる理由の一つが、このリズミカルな呼吸運動によって、セロトニンが活性化して精神が安定し心が内向するからでしょう。セロトニンとアルファ波は親和性があります。
例えば、リズム性運動である歩行では、視覚や聴覚などの外部環境からの情報は、大脳皮質において処理され、脳幹の神経細胞群を経由して運動の開始や歩行パターンの選択が行なわれ、これらの司令によって脊髄のパターン形成機構が駆動されます。
瞑想によって(直接的には意識的呼吸によって)上記のようにセロトニンが活発化します。この神経伝達物質は、ストレスを軽減して免疫力を高めます。呼吸への集中瞑想を行い、更に注意集中を司る前頭前野が活性化されることで、このセロトニンの分泌が活発化し、脳内全体を巡ります。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-1)セロトニン 6-4-1-1)セロトニン全般

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-1)セロトニン
6-4-1-1)セロトニン全般
脳内の神経伝達物質として働くセロトニン神経細胞は、その発信側は、ほとんどが大脳の下方の脳幹の「縫線核」(背側縫線核、正中縫線核、大縫線核、延髄縫線核群)にあります。伝線としての神経線維は中枢神経系全体(受信側)に分布しています。具体的には、大脳新皮質大脳辺縁系視床下部、脳幹、脊髄など広汎な脳領域に投射(発信)しています。
注)中枢神経系とは、大脳(大脳新皮質大脳辺縁系大脳基底核)、脳幹、小脳、脊髄をまとめた用語です。
そのため、セロトニン神経系によって調節される中枢機能は、生体リズム、神経内分泌、睡眠、体温調節、摂食行動、性行動などの本能行動から、一瞬のうちに重大性を漠然と評価するなどの情動・感情機能、更には精神活動としての認知機能まで、つまり身体系から感情系と精神系まで多岐にわたります。
例えば、一般的にはセロトニン機能低下は、性行動を促進し、セロトニン機能亢進は性行動を抑制します。つまりセロトニン機能が活発であれば性欲が低い。このようにセロトニンは調整機能であって、一方的に活性化させたり、逆に停止させたりする訳ではありません。
ちなみにドーパミンは性欲を促す側ですが、セロトニンはその性欲を抑える側です。このように促進系があれば抑制系も存在します。

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン) 6-4-0)神経伝達物質とホルモン

6-4)瞑想と神経伝達物質(ホルモン)

6-4-0)神経伝達物質とホルモン
この第四節では、神経情報伝達物質について説明して行きます。ということですが、まずは神経伝達物質とは何なのでしょうか。それは、脳を含めて身体内の特定の器官の働きを調節するための神経間の情報伝達を担う物質です。たくさんある神経伝達物質の内で、瞑想と関わりの深いものを紹介して行きます。なお情報伝達物質は、発信側と受信側とを知る必要があります。
なお神経伝達物質と似た働きをする体内物質としてホルモンがあります。では神経伝達物質とホルモンの違いは何なのでしようか。ホルモンは、主に内分泌臓器や組織でつくられ、「血流」に乗って標的器官へ運ばれて働く情報伝達物質です。それに対して、神経伝達物質は、「神経細胞間」のシナプスにおいて情報伝達を介在する物質です。情報を伝えるという役割は同じなのですが、伝え方が異なります。例えると、一般的にはホルモンはラジオ(電波で働く)型=一対多型で、神経伝達物質は電話(伝線で働く)=一対一型です。
なお神経伝達物質の説明は、主に中枢神経系に限定しています。